2024年は杓谷技研の船出の年でした
杓谷技研は2024年12月27日(金)をもちまして年内最終営業日を迎えました。2024年2月に前職との競業避止義務が明けて本格的にサービスを開始してからは怒涛の日々でしたが、おかげさまでビジネスも順調で、関わっていただいた皆様のおかげで充実した1年を過ごすことができました。この場を借りて深くお礼申し上げます。
2024年は杓谷技研の船出となる年でしたが、下記のような出来事がありました。
- 2024年1月:『いちばんやさしいはじめてのGoogle広告の教本』執筆開始
- 2024年2月:前職との競業避止義務の解禁。三田さん暫定CTO(挑戦者求む)として杓谷技研に参画。
- 2024年3月:アユダンテ株式会社のオンラインセミナーでプライバシーに関するセミナーに登壇
- 2024年7月:株式会社ロットネストとの協業開始
- 2024年8月:『いちばんやさしいはじめてのGoogle広告の教本』(株式会社インプレス)発売
- 2024年9月:アユダンテ株式会社が買収したシンガポールのGA360リセラーSparklineのセミナーに登壇
- 2024年9月:『インターネット広告創世記 インターネット広告創世記 ~Googleが与えたインパクトから発展史を読み解く~』連載スタート
- 2024年10月:アユダンテ株式会社にて「SERPs MAX」がサービス開始
- 2024年11月:1号社員として濱本さんが杓谷技研に参画
- 2024年12月:アユダンテ株式会社のGA360振り返りセミナーに登壇
- 2024年12月:’08入社のGoogle同期と恩師の皆様を囲む会を開催
ひとつひとつの出来事がとても思い入れが深く、ここに書ききれないこともたくさんあるのですが、個人的には『いちばんやさしいはじめてのGoogle広告の教本』の出版と、『インターネット広告創世記』の連載開始、シンガポールで現地のオーディエンスに英語でセミナーの3つが深く印象に残っています。
『いちばんやさしいはじめてのGoogle広告の教本』執筆の経緯
2018年刊行の『いちばんやさしい[新版]リスティング広告の教本』のリニューアル企画の話がもちあがったのは2023年の9月頃のことでした。この本は、2014年に発売された『いちばんやさしいリスティング広告の教本』を底本としていたため、基本的な内容や全体の構成は2014年版を踏襲しており、その10年後の2024年にそのまま利用するには限界を迎えていました。
また、2018年から2024年の間の大きな変化としては、YouTubeの動画広告の隆盛が挙げられます。インターネットに接続できる「コネクテッドTV」が普及し、テレビでYouTubeを視聴することが一般的になったことから、一般的なビジネスオーナーの認識も、もはやGoogle広告=検索連動型広告ではなくなってきていることを日々の仕事を通じて感じていました。こうした時代背景の中で、リスティング広告の教本をそのまま出版しても、すでに類書も多く、読者のニーズに合致しないのではないかと著者陣の間で議論になりました。
Google広告、Yahoo!広告、Meta広告などを満遍なく扱う書籍にする、というアイデアも出たのですが、広く浅くになりすぎるということで、Google広告を中心に取り扱うことに決まりました。方針が決まった後で類書を探してみると、信じられないことにGoogle広告全体を扱った書籍はこれまでほとんどなかったんです。これは私の推測ですが、Google広告はキャンペーンタイプごとに特徴が大きく異なるため、すべてのキャンペーンタイプを高い解像度で解説できる人が少なかったのではないかと思います。また、1冊の本におさめるには内容が大きすぎる、ということもあったかもしれません。実際、私も執筆始めてみて何度も後悔しました(苦笑)。見開き2ページの中に必要な情報を限られた文字数の中に詰め込んでいくのは大変苦労しました。結果的に『いちばんやさしい』シリーズ史上最大のページ数の327ページという大作になりました。
苦労のすえ、2024年8月26日に『いちばんやさしいはじめてのGoogle広告の教本』の発売にこぎつけることができました。書籍を出版していただいたインプレスさんによれば初速の売上は好調で、Amazonのレビューの評価も高く、一般経営工学関連書籍のカテゴリーで1位を記録しました。苦心した甲斐があったなと報われた思いです。杓谷技研のミッション「世界中のマーケティングソリューションを整理して誰もが利用可能にする」を体現することができました。
『インターネット広告創世記』の連載開始
『いちばんやさしいはじめてのGoogle広告の教本』の執筆の後、すぐに着手したのが『インターネット広告創世記』です。企画自体は2023年から始めていて、当初は杓谷技研ジャーナルで公開していくことを想定してインタビューと執筆を進めていました。『いちばんやさしいはじめてのGoogle広告の教本』の編集者にダメ元で書籍化の相談をしてみたところ、荒削りな企画だったにも関わらずご賛同いただき、9月から「Web担当者Forum」での連載に至りました。
連載において歴史ナビゲーターを引き受けてくださった佐藤康夫さんは、Google日本法人の初期メンバーで、新卒時代に私をGoogleに採用してくださった恩人でもあります。グローバルでの体制変更などの影響で、一緒に在籍していたのはわずか1年半という短い期間だったのですが、有り難いことにその後も目をかけてくださり16年のお付き合いとなります。Google在籍時代は雲の上の人すぎてお話するだけでもとても緊張していたのですが、その後アタラ合同会社(現アタラ株式会社)に転職した際に佐藤さんが会長を務められていたことから、お話させていただく機会も増え、インターネット広告業界の成り立ちについて様々なことを教えていただきました。
杓谷技研を創業するにあたり、「独立するからには自分にしかできないことをやろう」ということを考えていたのですが、真っ先に思い浮かんだのがこの連載の企画でした。もうひとつ考えていたこととして、「まだ使い切っていない自分の才能を使い果たそう」ということも考えていました。私は早稲田大学第一文学部の出身で、学生時代に人一倍本を読んできたという自負があり、インターネット広告業界の歴史を、佐藤さんのキャリアを、広告ビジネスの文脈におけるGoogleを、物語として描写できるのは自分しかいないのではないか、と思いました。あくまでも自分の中での勝手な思い込みなんですが(笑)。
結果的に、多くの人に「面白い!」と感じていただけているようで、大変でしたが始めて良かったなと感じています。広告ビジネスとはまた違った種類の深い手応えを感じています。この連載をプロデュースしてくださったインプレスの今村さん、Web担当者Forumの編集長の四谷さん、同じく編集者の今井さんのご協力がなければこの連載が日の目を見ることはなかったので、ご協力に深く感謝申し上げます。
連載はこれからが本番で、本邦初の証言がたくさん出てくると思いますので、ぜひ応援のほどよろしくお願い致します。
シンガポールでSparklineのセミナーへの登壇
私は、杓谷技研のコンサルティングサービスの一環として、SEO・GA360のリセラーとして著名なアユダンテ株式会社でお仕事をさせていただいています。アユダンテが2024年6月にシンガポールのGA360のリセラーの「Sparkline」社を買収したことがきっかけで、シンガポールでプライバシー関連のソリューションについて英語でセミナーを実施することになりました。
前職が英国の広告代理店でしたし、Google時代、Tripadvisor時代も英語を使う機会はたくさんあったのですが、あくまでも社内で使うだけで、社外の不特定多数の方に向けた英語のセミナーは初めてだったので、自分の中ではかなりのチャレンジでした。このお話を最初にいただい時はかなり逡巡したのですが、CTOの三田からことあるごとに「NASDAQへ上場しましょう!」とけしかけられていたこともあって、思い切って挑戦してみることにしました。きっと、自分ひとりの考えでは日和見して断っていたと思います。落合陽一さんのピクシーダストの経緯などを聞くにつけ、甘いことではないと重々承知しているのですが、最初から諦めてしまってもそれはそれでつまらないですよね。
まず、日本語でスクリプトを書いて、AIで英語に翻訳してもらった文章をレビューして整え、出来上がった台本をスピーチAIにかけて英語で話してもらい、それをひたすら聞いて、同じように話すという練習を繰り返しました。その結果、法律やテクノロジーが関連する専門用語の多いトピックだったにも関わらず、セミナーの評価は上々で、Sparklineのみなさんとの絆も深まりました。実は、このセミナーにチャレンジするまではどうやって自分の英語力を向上できるか見当がついていなかったのですが、AIを駆使すればまださらにうまくなれそうだぞ、と手応えをつかみました。これも挑戦したからこそ得られるTipsですね。シンガポールで手応えを掴んだので欲が出てきて、将来的にはニューヨークでも何か成功体験を掴みたいですね。
私は、2005年にニューヨークに語学留学していたのですが、タイムズスクエア付近にあるNASDAQの前をよく通ったのですが、学生だったので電光掲示板に映るティッカーシンボルを見ても「マイクロソフトくらいしかわかんねぇな」という状態でした。お金も英語力もなかった学生時代に過ごした時には「ニューヨークはもういいかな」と思っていたのですが、残りの人生の中でもう一度ニューヨークの舞台に戻る、というのは悪くないかな、と少しだけ思い直している今日この頃です。
2024年、ありがとうございました!
こうして振り返ると、2024年は多くの人に成長の機会を与えていただいた1年だったと思います。貴重な機会を与えてくださったアユダンテ、Sparklineの皆様、執筆の機会をいただいたインプレスの皆様、常にチャレンジングな目標を与えてくれる同僚達のおかげで素晴らしい1年を過ごすことができました。杓谷技研としても、個人としても、もっともっとやれることがあると思いますので、今後ともよろしくおねがいします。
それでは皆様、よいお年を!